読了。
各所の書評で出来るだけ先入観無く読むことを推奨される小説なので、ここでも詳細は控える。
読者を盛り上げて、次のページをめくらせることを目的に書かれたエンターテインメント小説と異なり、あくまで「文学」を志向した本作は、ひたすらに抑制された筆致で淡々と話が進む。しかし、丁寧に書かれた小説であるので、読後感がしっかりしている。
本を読む巡り合わせというか、タイミングの善し悪しと言うものはあるもので、今回のように生活の合間を縫って読むのではなく、まとまった時間に落ち着いて読みたかったと思う。
本書に関するブログなどによると、各国読者の感想として大きく分かれるのは、ややもすると受動的な、登場人物たちの行動だという。メンタリティという観点からすると、私の感想としては、--日本生まれではあるが英国で育ち、全く日本語がしゃべれない作者としては、全く同意しかねる感想かもしれないが--主人公たちが、悲愴な運命にあらがいながらも、彼らがラストシーンで見せる、自らの運命に対しての、詩的で静かな諦観に、日本人の民族性と通じるものを感じた。
ところで、作品中の重要なモチーフであり、表題にもなっている「Never Let Me Go」という曲が聞いてみたい。