ぽんぽこ日記

プログラミング、読書、日々の生活

フリーランスエンジニアになって10年が経ちました

おかげさまで、フリーランスエンジニアとして活動を始めてからちょうど10年が経ちました。

この10年間、大きなトラブルには見舞われませんでしたが、今となっては面白いエピソードを二つ紹介します。

知らないうちに関係する社員が全員辞めていた話

とあるスタートアップのiOSアプリを手がけていた時のことです。そのプロジェクトはリーダーのAさん、若手のBさん、そして私の3人で進めていました。ある夜、そのスタートアップの社長(仮にXさんとします)から電話がかかってきました*1

X社長:「筆者さん、進捗はどんな感じですか?」

私:「○○という機能の実装中で、X日頃に完成予定ですけど…」

X社長:「え、まだそんな感じなんですか!?」

私:「Aさんの指示に従ってスケジュール通りに進めていますけど…」

X社長:「実は…」

章タイトルの通り、会社のエンジニアが一斉に退職していたのです。

私は事件の前週、Aさん、Bさんと東京で打ち合わせをしていましたが、全くなんの兆しもなく、いつも通りに仕事を進めていました。なので、まさに寝耳に水の話でした。

Xさん:「申し訳ないですが、筆者さん、この案件はこちらで預からせていただきます。今月までの稼働分は支払うので、今日までということで。」

驚きましたが、Xさんもこの事態に困り果てている様子で、交渉は難しいだろうと思い、電話を切りました。

その後、きちんと支払いを受けましたので、最悪の事態にはなりませんでしたが、フリーランス初期の出来事だったため、「こんなことが頻繁に起こるなら、この仕事も考え直さないとな」と思わされる事件でした。

結局、当時社内でどんなことがあったのかはわからずじまいですが、その会社は名前を変えて現在も存続しています。

余談ですが、その後もAさんとは個人的なお付き合いが続き、この件のおかげかどうかは分かりませんが、仕事を発注していただいたり、知り合いの会社を紹介していただいたりしました。

その知り合いの会社の方曰く、

「滅多に人を褒めないAさんが、筆者さんなら間違いないと言っていましたので…」

と評価していただき、大変光栄に思いました。

壁にぶつかっていた案件で奇跡が起きた話

エンジニアリング系に強い会社から、一連の文書をスキャンした画像データから特定の文字列を抽出する依頼がありました。従来の方法では精度が上がらず、ディープラーニングを用いて解決できないかという調査的な案件でした。

様々な手法を試みるも、なかなか成果が出ず、安請け合いしてしまったことを後悔しつつ悩んでいました。

そんなある日、私用で京都に訪れた際、偶然入ったビアパブで飲んでいたところ、隣の青年二人が機械学習の話題をしているのが耳に入りました。勇気を出して話しかけてみると、彼らは京都大学の大学院生で、専門がディープラーニングを用いた画像認識でした。

その夜は二人のうちの特に専門が近いYくんと名刺交換だけして別れましたが、その後いよいよ行き詰まってきた私はわらにもすがる思いで連絡を取り、手伝ってもらえることになりました。

文字認識の障害となっていたのは、画像内の文字の中心や上下部分に引かれた線でした。彼に相談すると、 「線の入り方にも法則性があるので、線が入ったパターンも同じ文字と見なして、ノイズの入ったパターンを教師データに追加し、n:1のパターン認識として再定義してXXNetで学習させればうまくいきますよ」

その後も多少の難航はありましたが、彼の提案した手法を使うことで、見事に精度の高い認識結果を得ることができました。

後日、彼から聞いたところ、あのビアパブは京都大学の学生が集う店だそうで、次に訪れた際は隣の男性がフーコーやデリダの話をしながら女性を口説いていて、「結局それかよ」と苦笑しました。とにかくハイレベルなお店でした。

castlewest-kyoto.com

ビールとお料理もおいしいので京都に訪れた際はぜひどうぞ。

ちなみに、ディープラーニングの事前学習にはEC2の高価なインスタンスを使っていたのですが、作業後にインスタンスを落とすのを忘れて寝てしまい、数万円を無駄にしたのも今となっては良い思い出です。

その後Y君は東京のメガベンチャーに研究職として就職し活躍しているようです。本当にお世話になりました。

フリーランスエンジニアの変遷

この10年での仕事の仕方も随分と変わりました。

なんと言っても2020年から始まったパンデミックの影響によって、フルリモートの仕事の数が増えましたし、リモートで仕事するためのサービスや環境が整いました。

パンデミック以前ではなんだかんだと1、2ヶ月に1回は東京に出張していたものですが、以降は皆無と言って良いほどで、むしろこちらから対面で話したいと希望することがあるほどです。

仕事を見つける手段も増えました。Findy Freelanceのような案件紹介のサービスが複数現れて、クライアント側もフリーランスエンジニアを使いやすくなったことも大きいと思います。

過去の実績など

ponpoko1968.hatenablog.com

ponpoko1968.hatenablog.com

ponpoko1968.hatenablog.com

ponpoko1968.hatenablog.com

*1:きょうびのIT業界で、夜に電話がかかってくるというのはかなりの緊急事態です。