「ブログを書くまでが勉強会です」ということで、 7月3日にひょうご産業活性化センターで開催された「神戸市役所・庁内アイデアソン」というイベントにメンターという役割で参加させてもらったので、このレポートを書きます。
今回のアイデアソンは神戸市役所の職員の方が日々の業務の中で持っている「アイデア・気づき」をオープンデータとITで形にすることが目的でした。
筆者は今年初めからITの力で地域の問題を解決しようというCode for Kobeというコミュニティに参加しており、この活動の一環として神戸市が公開するオープンデータをつかったiOSアプリを開発しています。(近日公開予定) 今回はNPO法人コミュニティリンク 榊原代表のお誘いで、Code for Kobeのエンジニア代表として、アイデアを具現化する上での技術アドバイザーという役割でお声がかかりました。
メンターには私の他に、同法人のメンバーの方や、NTTドコモの方がメンターを務められました*1。
アイデアソンの意義
イベントのまとめの中で榊原代表のことばをまとめると、我が国の若年人口が減っていくなか、ITエンジニア(エンジニアに限らずデザイナーなど含め)は東京に一極集中しています。
地方でITエンジニアが働けるようになるためには、住みやすい地域であることも大事なのですが、それ以前に仕事がなければならず、ITを地域に役立てることで、地域のITスタートアップが育っていく素地を作っていこうという構想があり、今回のアイデアソンもその一環ということです。
首都圏のITベンチャーの仕事も多く経験してきた筆者の意見を補足すると、単にITエンジニアの仕事が増えると言うだけではなく、仕事そのものに魅力がなければならないと思います。
今のところ関西圏にもそこそこ開発の仕事はありますが、エンジニアにとって魅力的な仕事が多いかというと、この点に関しては圧倒的に首都圏と差が付いているというのが実感です。
首都圏のスタートアップではGithubをはじめとするクラウドサービスを使ったアジャイル開発はもはや当たり前ですが、関西では「エクセル方眼紙」という言葉に代表される旧態依然とした非効率で不毛な案件が多いように思います。
参加してみて思ったこと
マッチング重要
5つのチームに総じていえることとして、リソースの存在 x リソースを求める人がマッチングする機会・手段 が足りないという共通のテーマがあると感じました。
たとえば、神戸市の職員は15,000人いらっしゃると言うことで*2、その中には様々な専門性や趣味を持った人がおり、そうした人たちのスキルを部署の壁を越えて活用するために、「どこの部署の、誰が、どんなスキルを持っているか?」を共有するサービスのアイデアや、子育てをする親御さんにとって、子供さんの医療に必要な情報、たとえば定期検診、予防接種のスケジュールと受けられる医院の場所などの情報をまとまって知る手段がないなど、リソースがないわけではないけど必要な人に届いていない、もしくは足りているのかいないのか自体もわからないといった話題が散見されました。
こうしたニーズはまさにITの得意とするところなので、ぜひとも実現したいものです。
ファシリテーションってすごい
今回のアイデアソンはファシリテーションに熟達したかた(このかたも神戸市職員だそうで、多彩なスキルを持った方がいらっしゃるというのは本当にそうだと思いました)が進行を担当されました。
今回参加された方たちは、日頃は神戸市各地で様々な業務に就かれており、アイデアソンのメンバー公募に志願をされた、職員の方々です。ほとんどの職員の方が、事前にお互い面識がなかったようです。にもかかわらず、参加者の自己紹介、チームビルディングからアイデアのまとめ、ブラッシュアップまで手際よく進められ、アイデアソンが終わった段階ではそれぞれのチームがまとまりのある成果を発表できるまでになったのには驚かされました。
実は筆者は、アイデアソンに参加するのは今回が初めてでした。アイデアソンが始まる前は、朝9:00から夕方の17:30という長い時間、何をするんだろう?と思っていました。始まってみたらメリハリのある進行により、あっという間に時間が過ぎていきました。
ITサービス=「アプリ」
今回、ディスカッションや発表のなかでは「〜してくれるアプリ」「〜がわかるアプリ」ということば良く出てきました。
我々からしたら、それはWebサイトでしょ?って思うようなものも、すべて「アプリ」ですし、単体アプリなのかサーバ=クライアント構成なのかも別に気にしないわけです。
一般の人たちのイメージの中では、ITを使ったサービスはすべて「アプリ」という言葉に集約されるんだな、そのくらいスマホアプリがサービスへの「入り口」として認識されているんだということを痛感しました。
IT業界の外の人と交流する意義
職業柄、ITに明るくない人と話をする機会というのは少ないので、日頃一般の人がITやシステム開発に対して抱いているイメージを知る良い機会になりました。
「システムって、はじめっから必要な物をすべて盛り込んで開発するのと、シンプルな物から初めて少しずつ、機能を足していくのとどっちが楽なの?」という素朴かつ非常に本質的な質問を訊かれ、アジャイル開発の話と、役所のような大きな組織からのシステム開発を受注する場合に起こりがちな問題を説明しました。(詳しくは書きませんが想像にお任せします)
職員の方にとっても、筆者のように、実際の開発に携わっている人間がそばについてアドバイスしてくれることで、自信を持ってアイデアを膨らませることが出来て良かったと、のフィードバックをいただき、参加して良かったと思いました。ITエンジニアはもっと業界外の人と交流すべきだなーと思いました。
また、あまり接することのない地方公務員の人と話す機会というのも貴重な体験でした。
私が担当したチームにはTさんという堂々たる体躯の、いかにも体育系といった外見の男性がいらっしゃったのですが、大変な読書家でもあり、ペリー・ローダンシリーズを全冊読破していて、グイン・サーガシリーズの執筆を引き継いだ作家さんともお知り合いとのことでした。この人とはもっとSFの話をしてみたかったですw
最後になりましたが、何かしら自分のスキルが社会に役立てられるというのを実感できてよかったです。また機会があれば参加してみたいと思います*3。